ヤワラ “カルシウムと展着促進材”

カルシウムは植物体内で片寄る

カルシウム(Ca)の役割と特性

古くから、植物は生態学的に好石灰植物(マメ科を代表とする多くの畑作物・野菜・果樹)と、好珪酸植物(イネ科等)に分類されることがあります。しかし、これは前者が生理学的カルシウム要求量が高いので、カルシウムを多く吸収し含有率が高いのか、それとも発生学的に根のカルシウム吸収力が強いために、ただ単に多量のカルシウムを体内に集積するにすぎないのか、まことに興味深い事象です。

ここでは、カルシウムの役割と特性について考えてみます。

■ カルシウムの働きは微量要素?

多くの植物の健全な組織のカルシウム含有率は乾物当たり0.2%〜%までにのぼり、NPKの多量要素に対し、カルシウムはよく “中量要素” と呼ばれます。しかし、1960年代にはWallaceという人が、タバコとトウモロコシは適当な条件下ではカルシウム濃度がわずか2ppmの水耕液で十分生育し、これらの葉に含まれるカルシウムは乾物当たり0.08%〜0.11%と非常に低いレベルであることをすでに確認しています。

すなわち、植物の本来の生理的カルシウム要求度は微量要素と比べてもそれほど大きくないのに、実際の畑で生育した植物は比較的高いカルシウム含有率を示します。これは、カルシウム肥料が植物栄養素としての役割以上に、土壌酸度の矯正を目的に大量に施用されることに原因しているのです。

このことから、植物の構成や機能の維持に必要なカルシウム*は微量であり
それとは別に 過剰吸収されたカルシウムが各組織に集積** していると考えざるを得ません。

*   微量要素的カルシウムが関与している役割

細胞分裂の有糸分裂・細胞の伸長・細胞膜の強化 (ペクチン酸カルシウム)・ミトコンドリアの活性化 ⇒
タンパク質合成促進 (N吸収の促進)・各種酵素の活性化・光合成生産物の転流促進・細胞液のph調整など

** 集積カルシウムの形態

シュウ酸塩・リン酸塩・炭酸塩・珪酸塩など

イネの根・茎・葉由来のカルス細胞をカルシウム濃度1ppmの培養液で3週間振とう培養したところ、生重で根・茎・細胞は10倍以上、葉細胞は5倍に増殖し、乾物中のカルシウム含有率は各々0.025%0.033%0.024%で、大きな差は無かった。つまり、根・茎・葉で細胞生理学的カルシウム要求度に差は認められなかった。 [1972 鈴木   ]

■ カルシウム欠乏症の発生要因

厄介なのは、いったん不溶となり集積したカルシウムは、もはや水に溶けることはなく植物体内を移動もできず、植物の生理活性のために再利用され難いということです。

通常、植物体内のカルシウム含有率は根・茎に比べて葉で、それも下位の古い葉ではるかに高く、これは根から吸収された水溶性カルシウムが導管を通じ蒸散流に乗って移動し、葉から水分が蒸散したあと葉身に残され蓄積するために起こる現象です。

ここから、植物の先端(生長点や果実)でなぜカルシウム欠乏が起こりやすいのか、ひとつのヒントが浮かんできます。植物(葉)が大きくなって水の蒸散が盛んになると、カルシウムはどうしても気孔が多く存在する葉に向かって動き(偏向し)、生長点や果実ではごくわずかの量でよいのに、そのわずかのカルシウムが届かず、そこで細胞分裂の停止や細胞膜損傷などの生理障害が起きてしまうのです。

つまり、カルシウムは 植物体内で動きにくい のではなく 片寄りやすい のです。

効率よくカルシウム(Ca)を補給するために

■ 予防と継続

では、どうしたらよいのか?

土壌中に十分な量の石灰があっても、なんらかの原因で根が弱っていてカルシウムが吸収されなかったり、高温で地上部が萎れる(蒸散が弱まる)ことを繰り返しカルシウム欠乏が予想される場合、生長点や果実の周辺の葉に集中的にカルシウム剤を葉面散布 してカルシウムを補給しててください。

カルシウムは植物体内で固定されやすいので、薄い濃度でよいですから常時有効なカルシウムが必要とされる部位に存在するように、気を使うことが必要となります。例えば、トマトの尻腐れ症はペクチン酸カルシウムができないため果実が軟弱になって起きるわけですが、欠乏症はカルシウム剤を散布して治るわけではありません。少しでも気配が見えたら、まずは予防散布を徹底してください。その後、作物の様子を見ながら定期的に継続散布してください。

■ カルシウム補給剤「ヤワラ」

ヤワラのカルシウム源には、吸収されやすく植害を起こしにくい硝酸カルシウムを使っています。散布液の茎葉への付着・拡展・浸透を目的とした展着促進材として、新たに2種の界面活性剤を組み合わせ、多糖類のトレハロースを添加してあります。

また、副次効果として植物を萎れにくく、または萎れからの回復を速める効果もあり、その面からもヤワラは蒸散を安定させカルシウムの移行をスムーズにしているといえます。

1,000倍希釈液で十分ですので、7〜10日おきに葉面散布してみてください。その経済性と効果の高さを実感されると思います。

 ヤワラ散布液の葉面付着状態 / さといも 

展着剤並みの展着効果

ヤワラ 1,000倍画像クリックで拡大 (95.65KB)

ヤワラ 1,000

優れた展着効果

展着剤A 1,000倍画像クリックで拡大 (83.90KB)

展着剤A 1,000

他カルシウム剤 1,000倍画像クリックで拡大 (86.96KB)

他カルシウム剤 1,000

水道水画像クリックで拡大 (87.88KB)

水道水(水玉ができる

 カルシウム(Ca)のきゅうり葉面からの吸収率および体内移行力の確認試験 

■ 目的

カルシウム葉面散布剤をきゅうりの茎葉に散布し、
カルシウム成分の作物への吸収率および散布各部位から上位への移行力を確認する。

■ 処理内容

中〜下位葉部分(上位より5葉目以下)に各薬剤を十分散布する。

■ 調査方法

試験サンプルをミキサーにかけた後、
搾汁しカルシウムの濃度を簡易比色法で計測し、カルシウム含有率を確認する

■ 考察

  • ① 散布1日後(中位葉)のカルシウム含有率は、
      ヤワラ散布区が一番高く吸収率に優れていると推察できる(表-1
  • ② 散布3日後の上位葉のカルシウム含有率も、
      ヤワラ散布区が一番高く移行力に優れていると推察できる(表-2
< 表-1 > 生重当りカルシウム量 : mg / kg

散布1日後 散布3日後
中位葉 上位葉 中位葉 上位葉
① ヤワラ 160 96 193 191
② 酢酸Ca製剤 149 79 178 107
③ 他Ca剤 - G剤 - 133 93 134 119
④ 他Ca剤 - F剤 - 138 85 212 105
⑤ 無処理 150 79 196 86
< 表-2 >

きゅうりにおける中位葉散布後の上位葉カルシウム含有率の変化

製品生物試験 [SS0313] >>

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