上根が死んでしまった稲株は、水分と窒素分ばかりを吸収してしまい、止め葉の活動に必要なリン酸などが吸収されにくくなってしまいます。こうして止め葉の活動が低下すると、未消化のまま窒素分がそのまま米粒に転流され、食味に影響をおよぼすタンパク含量が上がり食味が落ちてしまいます。
登熟期まで根を残し、リン酸などをしっかりと吸収させるためには、前述したように幼穂形成期にしっかりとした根を作ること。次にその根を守ることが大切です。水稲の根が痛んでしまう原因として、酸欠や乾燥があげられます。出穂後に水を溜めっぱなしにしてしまうと、土壌中の酸素が不足し酸欠を起こしてしまうので、水を入れ替えてやることで新鮮な酸素を土壌に供給することができます。
ただし、入れ替える際に乾燥させすぎると、今度は乾燥による根痛みを起こしてしまいます。「まだ充分な水はあるから大丈夫」と安心しているとあっという間に水は無くなってしまいます。晴天の時などは、水の掛け流しなども有効です。そして、できるだけ収穫ぎりぎりまで落水することを我慢し、乾燥による根痛みを防ぐよう心がけてください。晴天であれば10a当り約10tの水が蒸散する(1日約1cm減る)といわれております。「味覚宣言」で登熟期に活躍する根を作り、その根を守って食味向上を目指してください。
収穫14日前(まだ水分は残っている)